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『養生訓』に学ぶ

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『養生訓』
に学ぶ

2018.06.14『養生訓』と貝原益軒④

 またそれまでの養生論の書は漢文表記が多く、一部上流社会と知識層が主な読者であった。しかし『養生訓』は、益軒53歳のときに、中国の伝統薬学や養生文化関係の文献を抜粋し、若年から読書記録としてまとめてきた漢文の『頥生輯要』を、30年後に再整理したうえで、庶民でも読めるように平易な和文で書いたものである。全8巻が刊行されたのは正徳3年(1713)であった。それゆえこの『養生訓』からは、養生文化の本質をそれ以前に出たものよりも広くとらえ、その真意をできるかぎり分かりやすく伝えようとした益軒の熱情を感じ取ることができる。

 加えて『養生訓』は医薬学の専門書ではないにもかかわらず、医学・薬学分野に触れた内容を多く含んでいる。また、儒学や道学にかかわる内容や仏教に関する学術的な視点、さらには生命と健康、社会道徳と倫理にかかわる価値観の由来なども解説されている。そのうえで病気に対する注意書きとして、健康な生活を守るための効果的な作法や行動、有益な食材の使用方法、そして心のはたらきが健康のために重要であることまで、医薬学の領域をこえて、気配りをもってこと細かに述べられている。

 この多彩な記述に現れる貝原益軒の哲学的見識(伝統文化的とも学術的ともいえるが)は、間違いなくある一つの信念から生まれている。それが「養生」という核である。

 このように老年になってからの活動にいっそうの磨きがかかる益軒についてより注目すべきことは、その年齢にかかわらぬ抜群の精神的・肉体的体力の持ち主であったことである。

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